スクラブ世代の歯科医師が考える、制服と公共空間の話なんだがね。
医療従事者の制服って、実はけっこう語るべきことが多い。
今の医療現場はスクラブが主流だ。 動きやすいし、洗いやすいし、色も選べる。 若い世代の医療者はほぼスクラブだと思う。
でも、私は白衣が好きだ。
理由はいくつかあるけれど、一番大きいのは 「白衣は医療者であることの象徴」のようなものだからだ。
スクラブは機能性の服。白衣は記号性の服。
スクラブは「仕事着」。 白衣は「職業そのもの」。
私はそこに、ちょっとした美学を感じている。
それに、学生の頃は スクラブ=仕事できる先生 というイメージが形成されていたから、 まだ自分はその領域に到達していない気がして、なんか着れない。まぁどうでもええ話だけど。
スクラブと白衣は、文化が違う
スクラブはカジュアルだ。動きやすいし、色も自由。医療者の個性が出る。
白衣はフォーマルだ。医療者であることを“外側に示す”服。患者にとっては安心の記号でもある。
どっちが正しいとかではなく、制服には文化がある。
そして、制服は医療者のアイデンティティでもある。
原宿で見た「白衣っぽい服」の違和感
昔、原宿でショップ店員らしき人が 白衣のような上着を着て歩いているのを見たことがある。
街の中で白衣を見ると、あまりにも医師や歯科医師のイメージが強すぎて、一瞬で目を引く。
白衣は医療者の記号性が強すぎる服だ。
普段使いの文脈に置かれると、一気に“異質な存在”として浮き上がる。
そして、あれだけ人の目を引くということは、良くも悪くも 様々な人の視線や評価の“的”になりやすい服 だとも感じた。
街で白衣を着るというのは、それだけ強い意味を背負うということなんだと思う。
ここから本題:制服で外に出ていいのか問題
医療従事者がスクラブや白衣のまま飲食店に入る。コンビニに寄る。スーパーで買い物する。
これ、医療者の間でもずっと議論されている。
「別にいいじゃん」という人もいるし、「いや、やめたほうがいい」という人もいる。
私はどちらかというと後者だ。
理由は 公衆衛生の問題だ。
歯科の診療中の服には、切削片、唾液、血液、エアロゾル、粉塵など、どうしても“医療空間の痕跡”が付着する。
それを飲食店や公共空間に持ち込むのは、どう考えても良くない。医療現場の汚染を、そのまま公共空間に持ち出すことになる。
だから私は、白衣でもスクラブでも、そして将来どんな制服を採用したとしても、診療で使った服のまま外に出ることはしない。
衛生的に考えて、それが自然だと思う。
「自由に外出していい」vs「公共空間での責任」
もちろん、制服で外に出るのは自由だ。
でも、公共空間には他者がいる。
医療者は公共性の高い職業だ。だから、制服で外に出るときは “医療者としての責任” が外にもついてくる。
これは「自由とわがままの境界線」の話でもある。
自由に外出するのはいい。でも、公共空間では他者の視線がある。
医療者の制服は、その視線を強く引き寄せる。
だからこそ、「自分だけの都合」で判断するのは難しい。
▼医療機関における“自由”については、こちらの記事でも書いています▼

結論:制服はただの服じゃない
スクラブも白衣も、医療者の象徴だ。
空間の境界線をつくる記号だ。
公共性を背負う服だ。
自由と責任の境界線を示す服だ。
だから私は、制服で外に出るときは少しだけ考えたいと思う。
「自分は医療者である」ということを、外の空間にも持ち出すことになるから。
結局のところ、
人間同士、ちょっとくらい相手のことを考えて行動しようぜ。
歯科医師としては、そう思うのである。
ちなみに──私が医院を継承したら、制服はちょっと変えたいと思っている。(おまけ)
これは患者のためとか、「柔らかい医療空間をつくりたい」とか、そういう立派な理由じゃない。
完全に自分がそうしたいからだ。
髭。フィッシャーマンキャップ。デニム。無地T(あるいは医院ロゴT)。なんかお洒落っぽいエプロン。
こだわりカフェの店員みたいなスタイルで診療したい。
私の個性がそのまま空間に爆発しているような、「ここは自分の空間だ」と思える医院にしたい。
それで患者が 「なんか面白いな」「こういう医院もいいかも」くらいに思ってくれたら、それで十分だ。
もちろん、これは 医院の中だけの制服 であって、診療中の服には切削片や唾液などの付着物があるから、外に出るときは必ず着替える。
医療者としての衛生観念は守りつつ、自分の美学は遠慮なく出す。
そんな医院をつくれたらいいな、と密かに思っている。
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