みなさんこんにちは。
以前にスポーツマウスガードの記事を書きました。
→市販マウスガードと歯科医院のカスタムメイド、何が違うのか歯科医師が本音で解説!
本記事では、スポーツマウスガードの取り扱い方法から競技規則上の注意点までを整理します。
マウスガードの取説
使用される材料
常温ではゴムのような柔らかさを持ち、加熱すると柔らかくなる材料(熱可塑性エラストマー)を使うことが一般的。中でもEVA樹脂が最も多く使われています。
材料に望まれる性質
- 衝撃の分散、吸収能力
- 高い耐久性
- 少ない違和感
- 良好な加工性
清掃・保管方法
清掃:流水下で柔らかいブラシなどを用いて汚れを落とします。変形の原因になるので熱湯は使用しないようにしましょう。ポケットに入れたまま洗濯乾燥機に入れてしまい、変形してしまった事例も見たことがあります。
良かれと思って歯磨き粉を使うと、歯磨き粉中の研磨剤でマウスガード表面に傷が出来てしまい、細菌が繁殖しやすい環境を作ってしまうので、歯磨き粉は使用しないでください。
保管:表面の水気をふき取り、清潔なケースに入れてください。入れ歯洗浄剤を用いるのも良いです。高温になる場所には置かないようにしましょう。
マウスガードは消耗品です。
変形、亀裂、フィット低下があれば安全性が低下するため、定期的な交換が必要です。
使用頻度にもよりますが、競技者では1年未満での再製作が必要になるケースもあります。
合わなくなったものを使い続けると、様々な障害を引き起こす可能性があります。
歯科領域におけるスポーツ障害の全体像
スポーツ障害とは
スポーツ障害は、スポーツ活動によって身体に過度の負担がかかり、痛みや機能不全を引き起こす状態を指します。「使いすぎ症候群」や「オーバーユース(overuse)症候群」と言われたりします。
歯科領域においてはクレンチング(噛みしめ)、適合の悪いマウスガード、高糖度のスポーツドリンクの頻回摂取などで引き起こされます。
症状
- 歯の異常な摩耗(すり減り)
- 知覚過敏様症状
- 被せものや詰め物の欠け、脱離
- 歯の欠け、折れ
- 顎関節症
- 咀嚼筋の障害
- う蝕(虫歯)
- 歯周病
- 口内炎
などが挙げられます。
クレンチング(噛みしめ)
クレンチングとは上下の歯をグッと強く嚙みしめる行為のことを言います。
トレーニング中や競技中、力を発揮するために無意識のうちに噛みしめを行う方も多いのではないかなと思います。
これが長期にわたって繰り返されると歯の磨耗(すり減り)、歯や筋肉の痛み、歯や詰め物・被せものの欠け、折れなどの症状が出ることがあります。
対策
- マウスガードの使用
- クレンチング習慣の改善
習慣の改善は原因に対して最も望まれる対処法ですが、無意識下で行われることが多いため非常に困難です。
スポーツドリンクカリエス
スポーツドリンクをよく飲む人の上の前歯から小臼歯にかけてよく見られる虫歯です。
糖度の高いドリンクを頻回に摂取する習慣が原因とされています。
対策
- 口の中の細菌の餌になりにくい甘味料を使用したドリンク
- 水にする
- ドリンクを飲んだ後に水を飲む、水でゆすぐ(ダブルボトルストラテジー)
- セルフケアの強化
運動中だから必ずスポーツドリンク!というわけではなく、運動時間によっては水など糖質の含まれていないもので充分なことがあります。競技中はエネルギー摂取が必要なこともあるでしょうから、スポーツドリンクや専用のドリンクを飲んだ後に水を飲む、ゆすぐといった所謂ダブルボトルストラテジーという方法もあります。
この辺のスポーツ選手・愛好家の運動中のエネルギー摂取については長くなりそうなので、いずれまた別の記事で紹介します。
国内競技におけるスポーツマウスガードのルール
※各競技団体の最新規定は変更される可能性があるため、必ず公式ルールをご確認ください。
マウスガードに関して規定のある国内競技
| 区分 | 競技種目 | 統括団体・ルール概要 |
|---|---|---|
| 完全義務化 | ボクシング | 日本ボクシング連盟(国際:AIBAと同様) |
| キックボクシング | 日本キックボクシング協会(ストラップ付は不可) | |
| テコンドー | 全日本テコンドー協会(国際ルールも同様) | |
| 総合格闘技 | UFC、PRIDE、パンクラスなど | |
| ラクロス | 日本ラクロス協会(国際ルールも同様) | |
| アメリカンフットボール | 日本アメリカンフットボール協会(国際ルールも同様) | |
| フィールドホッケー | 日本ホッケー協会(ゴールキーパーは推奨) | |
| 一部義務化 | ラグビー(U-13、U-19) | 日本ラグビーフットボール協会(U-12は推奨) |
| 空手(組み手) | 全日本空手道連盟(流派により異なる) | |
| アイスホッケー(U-20) | 日本アイスホッケー連盟(国際ルールも同様) | |
| 推奨・許可 | モーターサイクルスポーツ(推奨) | 日本モーターサイクルスポーツ協会(色規定あり) |
| ミニラグビー(U-12:推奨) | 日本ラグビーフットボール協会 | |
| インラインホッケー(推奨) | ワールドスケートジャパン(バイザー使用者に推奨) | |
| バスケットボール(許可) | 日本バスケットボール協会(色規定あり) | |
| 野球(許可) | 日本高等学校野球連盟(色制限あり) | |
| 柔道(許可) | 全日本柔道連盟(色制限あり) | |
| 禁止 | ゴルフ(公式戦・競技会) | 公式競技では使用不可 |
マウスガードの色について制約・制限のある国内競技
| 競技 | 色の制約・制限(競技統括団体規定) |
|---|---|
| ボクシング(アマチュア) | 赤を除く |
| ラグビー(U-15) | 赤、ピンクを除く |
| アメリカンフットボール | 白、透明を除く |
| ラクロス | 白、透明を除く |
| テコンドー | 白、透明のみ |
| 野球(高校・大学) | 白、透明のみ |
| 柔道 | 白、透明のみ |
| 空手(大会・流派により異なる) | 透明のみ |
| バスケットボール | 透明のみ |
| モーターサイクルスポーツ | 明るい色が望ましい |
ゴルフにおけるマウスガード使用についての整理(2026年時点)
ゴルフにおけるマウスガードの使用については、資料によって記載が異なり、混乱を招きやすい状況があります。ここでは、国内の公式情報を基に整理します。
日本スポーツ協会公認スポーツデンティスト協議会の見解
日本スポーツ協会公認スポーツデンティスト協議会 が公表している競技別一覧では、
**ゴルフ(公式戦・競技会)においてマウスガードは「禁止」**と明記されています。
これは、ゴルフが非接触競技であり、競技上必須の防具と位置づけられていないこと、また競技の公平性への影響が考慮されているためと考えられます。
一方で同協議会は、
医療用であることを事前に申告し、競技側の許可を得た場合には使用可能
とも明確に示しています。
つまり、
- 競技装具としてのマウスガード:原則禁止
- 医療装具としてのマウスガード:医学的必要性があり、事前申告・許可があれば使用可能
という二層構造になっています。
日本ゴルフ協会(JGA)への問い合わせについて
日本ゴルフ協会 の公式見解として、
ゴルフ規則に関する個別の問い合わせは電話・問い合わせフォームでは受け付けていないことが明示されています。
JGAは、競技規則に関する判断は本来、
- 大会委員会
- 競技委員会
が行うべきものであり、個別ケースについて一律の回答を示さない立場を取っています。
そのため、
「マウスガードは絶対に使用禁止なのか」
「医療目的であれば許可されるのか」
といった点については、大会主催者・競技委員会ごとに判断されるのが実情です。
ブログ読者への重要な注意点
インターネット上には、
「ゴルフではマウスガードは使っても問題ない」
「飛距離向上を目的としなければOK」
といった記載も見られますが、公式な競技規則として一律に認められているわけではありません。
ゴルフ競技においてマウスガードの使用を検討する場合は、
- 自己判断での使用は避ける
- 医学的必要性がある場合は、必ず事前に主催者・競技委員会へ申告・確認する
ことが不可欠です。
歯科医師としての立場から
医療目的でのマウスガードは、
パフォーマンス向上を目的とする装具とは本質的に異なるものです。
競技の公平性を損なわず、かつ選手の健康を守るためにも、
「使える・使えない」を単純化せず、医学的合理性と競技規則の両立を前提に判断されるべきと考えます。
ゴルフにおけるマウスガードは「原則禁止、医療的例外あり」という整理が最も実態に近いと言えるでしょう。
まとめ
スポーツマウスガードは単なる装具ではなく、口腔外傷の予防、顎関節保護、さらには競技パフォーマンス維持に関わる医療的デバイスです。
正しい取り扱いと定期的なチェックが、安全性を最大限に高めます。
ここまで読んでいただきありがとうございます。それではまた。
歯科医師 歯ゲタカ
歯科医師として10年以上、予防歯科・一般歯科を中心に診療。
これまで多くの患者の口腔健康の改善に携わってきました。
本記事では歯科医師としての臨床経験をもとに、 スポーツマウスガードの取り扱いについて解説しています。


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