歯医者のオルゴールBGMは『怖い』?~現役歯科医師が考える院内BGMの1つの解~

歯と健康
Screenshot

お洒落なカフェのジャズ、スーパーの独特な電子音的BGMなど、様々な施設で耳にするBGM。

いつぞやかの年末、お笑い番組中登場したある芸人のネタの中に
「オルゴールは歯医者を思い出してリラックスできないよね!」
というものがあった。

かねてよりSNSなどで「歯医者ってなんでオルゴール流すの?」「オルゴールを聴くと歯医者を思い出す」という声を目にしていたので、このネタを見たときに

「オルゴールを流している歯医者って、やっぱり多いのかも?」と改めて思ったのだ。

ちなみに私の卒後の院外研修先でもオルゴールを院内BGMにしていた。くるりの三日月やキャメルのオルゴールアレンジが流れていたのを思い出す。

というわけでXでアンケートをとってみたぞ!

内容は

『患者として通う場合、どんなBGMが最も落ち着くか』

実際に歯科医療に従事している人たちに対しては

『自分の職場でどんなBGMを流しているか』

の2つだ!非常に鋭く、参考になる考察も飛び出たので、とても良いアンケートだったと思うぞ!

アンケート結果

患者向けアンケート

まずは患者向けに行ったアンケート結果から

Screenshot

患者側アンケートでは、

  • カフェ系JAZZ・ボサノバが最多
  • 定番と思われていたオルゴール系は少数派

という結果に。

歯科医療従事者向けアンケート

次に、歯科医療従事者向けに行ったアンケート結果がこちら

Screenshot

歯科診療所では

  • オルゴール系が最多
  • 患者向けアンケートで最多のJAZZ・ボサノバ系は少数派

という真逆の結果に。面白い。

なぜズレが生じるのか?歯科医師としての考察

歯科医院がオルゴールを選ぶ理由?

  • 静かで作業の邪魔にならない。
  • 何となく無難。
  • 患者のストレスの低減、ヒーリング的な効果を狙うという考え

こんなところが挙げられると思われる。

あくまでも「歯医者が主体」となった考えのもと、選択されている可能性が高い。

なぜ患者はオルゴールを選ばないのか?

オルゴールは

  • 音色が単一
  • 反復的

であり、身体が大きく動かせず、視覚情報も限られる歯科治療中は、「聴覚」に意識が集中しやすく、不安や緊張状態では音の記憶が強く残りやすい、と考えられる。

そのため、上記で挙げた特徴を持つオルゴールは、患者として安心できるBGMとはなりにくいのではないだろうか。

いわゆる古典的条件付け(パブロフの犬)に近い現象が起きる?

古典的条件付けとは、犬に餌を与える前にベルの音を鳴らすことで、次第にベルの音を聞くだけで唾液を分泌するという条件反射の研究観察がもとになった理論のこと。

これを今回の『歯科医院のBGMと患者』で説明すると、

  • 歯科医院
  • 独特の匂い
  • タービン音
  • そして「いつも同じオルゴール」

これが セットで記憶に固定されると、

  • オルゴール単体でも
  • 不安・緊張・嫌悪感が再生される

という条件付けが成立することは、まあまあ自然であると考えられる。

これを踏まえると

「オルゴールを聴くと歯医者を思い出して嫌だ!」

は、気のせいでも過剰反応でもないのではなかろうか。

アンケートで寄せられた非常に鋭い考察

アンケートを実施する中で、非常に示唆に富む意見をいただきましたので、ここで掲載いたします。

※ご本人様から掲載許可をいただいております。

この意見を目にしたとき、本当に凄いなと思いましたね。注意深く観察して自分なりに咀嚼し、言語化している。私には一生書けないな、と思いました。

これは非常に納得できる指摘。

これは、心理学でいうところの「条件付け」に非常に近い考え方だと思われる。

オルゴールは、

  • 音色が単調
  • 曲の変化が少ない
  • 感情に直接訴えやすい

という特徴があり、特定の体験と強く結びつきやすい音楽と言える。

一方で、ニュース番組やラジオ番組は、

  • 内容が常に変化する
  • 日常生活の延長線上にある
  • 注意が音そのものより「情報」に向きやすい

という性質を持っている。

そのため、ニュース番組は治療体験そのものと結びつきにくく、不安な記憶を固定化しにくい「背景音」として機能している可能性がある。

結論

私としては、歯科医師が「患者をリラックスさせたい」という考えのもと、オルゴールを選ぶこと自体は、ごくごく自然な判断であると思う。

その一方で、「安心させる音」と「記憶に残らない音」というのは、必ずしも一致しないという視点は、改めて考える価値があると感じましたぞ。

ここまで見てきたように、歯科医院で流れるBGMは「心地よさ」そのものよりも、どんな記憶と結びつくかが重要なのかも。

少なくとも歯科医院という「不安を伴いやすい医療空間」では、BGMは“癒す音”ではなく、“記憶に残らない音”であることが、結果的に患者の負担を減らしている可能性があると考えられる。

アンケートに協力してくれた方たちの意見

  • 藤井風はセンスがいいと聞いたので藤井風を流しています
  • 演歌と落語を流しています
  • 洋楽ガンガンなってる
  • 適当にプレイリスト化したジャズ。患者さんからの評判もまぁまぁいい
  • アニメBGMのピアノアレンジ
  • スタッフが勝手に選んで流してる。基本最近のJ-POP
  • J-POPのオルゴール流してる
  • 歌詞が邪魔らしいのでクラシックやジャズ、オルゴールが主体。ラジオは気になって仕方なくなるのでお勧めしない
  • 洋服屋で流れてるノイズみたいなやつ流したい
  • ヴィヴァルディのようなクラシックがいい。オルゴールは頭にキンキン響いて嫌
  • 仕事は心を落ち着けてやりたい。クラシックを小さい音でお願いしたい。本当は無音がベスト
  • 夏場にボブマーリーを流してる医院があって笑った

皆様、ご協力ありがとうございました。

ほぼ歯科医師の意見なので、次は患者側の意見をもう少し深く拾ってみたい。

歯科医院のBGMは、まだまだ正解が「1つ」ではなさそうだ。

余談:ちなみに、私はこんなBGMを流している

最後に私の話を。

私は、「無音に耐えられない。けど作業の邪魔もされたくない。」という考えで、どちらかと言えば自分の仕事がしやすい環境づくりのためのBGM選択をしている。

歌詞の内容が分かってしまうと気が散るので、インストや洋楽中心。

午前中はハワイアンやサーフミュージック、午後はジャズや古いカントリーを流している。

クリスマスシーズンにはクリスマスミュージックも流すことにしている。

ハワイアンやカントリーは患者からの評判も良かったぞ!

というわけで、「私にとっては」居心地のいい空間で仕事が出来ているわけである。これが患者にとっても「記憶に残らない場所」であると尚いいんだけどね。

それではまた。

コメント

タイトルとURLをコピーしました